読書作法
あれははるか昔のこと。
運転免許の合宿所でのことだ。
私が入った合宿所は学生も少数ながらいたのだが、不幸ながら猛者たちが集まっていて免停なんて当たり前、免許取消しだって結構いるという恐ろしげなところだった。
若い人は大体金髪で、それなりの年齢の方はパンチパーマが多かったように思う。
というわけで、教習中もフリータイムも恐怖におびえて過ごしたものだ。
なんとかかんとか数日を経過し、休憩ロビーでテレビを見ていると(各個室にはテレビがなかったのだ!)隅のほうで文庫本を読んでいる人物がいることに気がついた。
その人物は私と同期というか、同じ日に入所した人物でそれまでに少しは会話を交わしたことがあった。
とはいえ、やはり金髪でヤンキーバリバリ、話しかけるのが少しためらわれた。
そのまま私は2・3時間とくに見るということもなくテレビの画面を見て時間を過ごした。
そろそろ部屋に戻ろうかと思って席を立った私の目に驚くべき光景が目に入った。
なんと、先ほどの人物が最初に見たときと寸分違わぬかっこうで文庫本を読み続けていたのだ。
ちょうど読み終わったらしく、パタンと本を閉じ、そのときになってやっと私に気がついたようだった。
そしてその人物は私のほうにその文庫本を差し出して「読む?」と言った。
パラパラと私は中身を見た。
はっきりとは覚えていないが、京都にはびこる魔物が現代に出現するというような、どちらかというと当時の私には受け付けがたい内容のものだった。
「おもしろいの?これ」私は少々失礼なことを言った。「ちょっと最後まで読めそうにないな」
しかし、その人物の返答はさらに私を驚かせた。
「いや、全然。つまんなかったよ。でも、最後まで読まないとね。読み始めた本は最後まで読む。その結果、面白くなかった。それだけ。買うときもタイトルさえ見てないよ。」
ガ・ガ・
ガ━━(;゚Д゚)━( ゚Д)━( ゚)━( )━(゚; )━(Д゚; )━(゚Д゚;)━━ン!!!!!
なんてカッコいいんだ、かっこよすぎる。
その人物はさらに続けた。
「それ読み終わったら、あそこにあるのも読めばいいよ。いっぱいあるから。」
指差した先には、みんなが読み終わった雑誌を置いておき、シェアするためのボックスがあった。
山積みされた雑誌の中に少なくない量の文庫本が混じっていた。
「ここに入ってる文庫本、もしかして…」
「うん、ここに来てから読んだんだ。どれもつまんなかったけど、少なくとも暇つぶしにはなる。雑誌よりはね。」
私はひれ伏したい気分になった。
▼読書代わりになれば幸いです
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