才能ってこういうことさ。
先日、ある小説を読む機会がありました。
横光利一という作家の「天城」という作品です。
横光 利一(よこみつ りいち、1898年(明治31年)3月17日 - 1947年(昭和22年)12月30日)は、日本の小説家・俳人である。菊池寛に師事し、川端康成と共に新感覚派として活躍した。本名は横光利一(としかず)。
横光の名を冠したものとして、父の故郷の大分県宇佐市でおこなわれる横光利一俳句大会があるが、これは横光が松尾芭蕉の家系を引くことや(その後の調査で血縁関係はないことが判明)、また本人も数多くの句を作ったところよりきている。横光利一 - Wikipediaより引用
横光利一の作品はあまり読んだことがなかったのですが、今回の出会いは実に衝撃的でした。
あらすじ
主人公の宇津は新入社員で舞台は社員旅行の天城山の登山。
同じく新入社員の畑中はその会社の暗黙のルールを破り、社員同士で結婚する予定で、その罰としてみんなが飲むための水が入ったやかんを持たされている(このあたり非常に時代を感じます)。
それを気遣った主人公宇津がやかんを少し持ってやろうかと言ったところ逆に水を飲まないかと勧めてくる。
しかし困ったことにこれまた暗黙のルールで、頂上に着くまで水は飲んじゃいけないよね的な空気が存在している。
さらにその登山に人生の象徴を読み取っちゃった宇津としてはなおさらルール違反をするまいと決意する。
しかし、運命とは皮肉なもの。
坂はますます険しくなり、水の入った(断りきれずすでに入れられちゃった)湯呑みをゆらゆらと水をこぼさぬようにホールドすることに馬鹿らしくなった宇津は思わずそれを飲んでしまう。
誰かが彼を責めるわけでもない。
しかし、宇津は自らルールを破ったことに激しく後悔する。
そして、その後悔は今回の登山そのものをも無意味なものにしてしまったと後悔スパイラルに突入していく。
このようにあらすじだけ書くと「それで?」と言っちゃいたくなるようなお話なんですが、これが絶妙に面白い!
とても短い小説なんですが、なんというかぎゅっと濃縮されただしがきいたお吸い物をのんだような満足感がありました。
ほんとにな~んにも起こらない話なんです。
探偵も刑事もお洒落な会話も恋愛もマジでな~んもないんです。
でも、作品としてすさまじい存在感がある。
才能って、こういうものなんですね。
嫉妬すら感じさせない圧倒的な力。
▼竹取物語から現代文学まで約600編の名作短編が一挙に楽しめるお得な一冊。
もちろん、「天城」も収録されています。
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